夢が破れた瞬間

はいこんにちは。愛真さなえです。
ニューオリンズジャズバンドの『広島ホットキャッツ』でピアノを弾いていますー

地元の音大のピアノ科卒業後はピアノの先生、というガチガチの音楽人生を歩んできたような経歴ですが、実は音楽の道以外にも進みたかった分野がありました。

 

「さなえちゃんは、大きくなったら何になりたいの?」
お盆やお正月にしか会わない親戚のおばちゃんに、毎回のように尋ねられる質問ね。

子どもの頃はどんな職業があるんだか、身近な大人からしか情報がありません。
「かめんライダーのおよめさんになりたい」を卒業後は、漠然と「ピアノの先生になりたい」と言っていたように思います。

 

そんな私に転機が訪れます。
小学校3学年の頃、学校の図書館のとある分野の本に、思いっきりはまってしまったのです。

エジプト、ギリシャ、インカ帝国、アステカ、マチュピチュ、アンコールワット・・・

そう、私がはまってしまったのは、古代文明。
そして自分の身近な大人には一人もいない職業に、強い憧れを抱くように。
その職業とは、

『遺跡を発掘する人』

ずばり、エジプトの遺跡を発掘していた『ハワード・カーター』さんの職業です。

 

発掘したい。
大人になったら、どこか外国へ行って、遺跡を発掘したい。
ちょっとずつ砂をよけながら掘っていって、昔の文明を発見する人になりたい。

ピアノは辞めることなく習っていましたが、当時の私のひそかな将来の夢は、ピアノの先生ではなく、『遺跡を発掘する人』でした。

 

「今度なにになりたいか聞かれたら、カーターさんの職業になりたいって言おう! 言うためには、カーターさんの職業の名前を知らなくちゃ!!」
と思った小3の私。
それからは「遺跡を発掘する人」の職業名がどこかに書かれていないか、注意深く気にしながら本を読んでいました。

ほどなくして、エジプト文明の本を読んでいるとき、カーターさんのことについて書かれた文章の中に、答えを見つけました。

なんだか難しい、聞いたこともない職業の名前。
どうすればなれるのかなんて見当もつきませんでしたが、なんだかなれるような気がしていました。

 

そして、あの日が訪れたのです。

忘れもしません。
母方の親戚の法事の日。
いつものお盆やお正月よりも、大勢の親戚が集まっていました。

「さなえちゃんは大きくなったら何になりたいん?」

いとこのおばちゃんや、おじいちゃんの妹、誰だかよくわからないおばちゃんたちに囲まれて尋ねられた私は、目をキラキラさせながら答えました。

「コウコガクシャ」

 

周りの大人たち一同、ドン引きです。

「え!?学者!?」
「ひゃーーーさなえちゃん学者になりたいん!?」
「なれんなれん!!」

そして大人たちの大爆笑。

 

そうか・・・
コウコガクシャは「学者」なのか・・・知らんかった・・・
「学者」って、なんかすごく頭のいい人っぽいし、たぶんアトムに出てくる「お茶の水博士」みたいな人なんじゃろな・・・
じゃあ無理じゃ・・・わたしは遺跡を発掘する人にはなれんのんじゃ・・・

 

私の初めての夢が破れた瞬間です。

もし、誰か一人でも、冗談でも応援してくれる人がいたら、私の人生は違ったものになっていたかもしれません。

大人は残酷。

夢は破れましたが、相変わらず古代文明は大好き。

楯築遺跡↓

楯築遺跡